親の財産管理はどうする?管理方法をご紹介!
人は歳を取ると認知症のリスクが上がります。65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になるとも言われています。もしも親が認知症になったら、親の持つ財産をどのように管理すればいいだろうかと不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。また、認知症にならなくとも、加齢に伴う判断能力の低下は避けることは難しいです。
この記事では、親の財産管理を行う方法の種類と特徴について紹介します。
◆親の財産管理の重要性
親がこれまで築いてきた財産を守るためには、あらかじめ対策を考えておかなければいけません。特に高齢になると、認知症や判断能力の低下が懸念されるため、早めに適切な対策を取っておくことは非常に重要です。
認知症のリスク
- 財産が使えなくなる: 親が認知症になってしまった場合、実の子どもであっても資産は勝手に動かせません。口座が凍結され、親の暮らしのために使う目的だったとしても資産を利用できなくなる可能性があります。
- 財産管理の委任が出来なくなる: 資産の持ち主である親が認知症になると、法的に有効な契約を行うための意思表示が難しい状態と判断されます。
詐欺や無計画な浪費のリスク
- 詐欺のリスク: 高齢者は詐欺の対象になりやすいです。高齢な親が自身で高額な財産をもっていると、誰にも相談せず詐欺の被害に遭ってしまうことも考えられます。
- 無計画な浪費: 判断能力が衰えると計画性のないお金の使い方をしてしまうこともあります。気づいたら自身が暮らすお金が尽きてしまうこともありえます。
◆親の財産管理をする前に
いざ親の財産管理を行うとなっても、何から手を付けたら良いのか分からない方も多いと思います。以下のステップで話し合いから進めましょう。
親や家族と相談
親の財産管理を行う際は、まずはしっかり親と話し合いましょう。本人はまだ大丈夫だと考えているかもしれませんが、どんなリスクがあるかを伝え、最適な道を一緒に考えていきましょう。また、家族の誰が管理を行うかしっかり話し合い、後々トラブルにならないように気を付けましょう。
財産の整理
親の財産を整理することで管理がしやすくなります。不動産や預貯金、有価証券などの資産を明確に把握しましょう。いくつもの口座に預金が分散している場合は、ある程度まとめると管理しやすくなります。
管理方法の選択
親の財産を管理するための制度はいくつか種類があります。詳しく調べてみて親や家族の状況に適した方法を選びましょう。この記事では親の認知症対策に有効な3つの方法について次以降の項目で軽く紹介します。
◆任意後見制度の活用
任意後見制度とは
任意後見制度とは、将来認知症などで判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ財産の管理を任意後見人に任せることができる制度です。本人の判断能力が低下し、後見人のサポートが必要になった時に、家庭裁判所に申し立てを行い選任されると支援を行うことができます。委任後見人は契約内容に基づき、本人に代わって財産を用いて生活のサポートを行います。
任意後見制度のメリット
- 本人が後見人を選べる: 任意後見制度では、本人に判断能力があるうちに、自らの意思で信頼できる人を選んで財産の管理を任せることが出来ます。
- 本人が希望した支援を受けられる: 任意後見人の権限内容は、契約によって自由に決められます。本人の状態や希望に応じて内容を具体的に決められる点が特徴です。
- 公的な証明がある: 公正証書の作成が必須なため、契約が公的に証明されるというメリットがあります。
任意後見制度の注意点
- 手続きが煩雑: 家族信託に比べると手続きが煩雑です。公正証書作成のための費用もかかります。
- 取消権のない点: 後述の法的後見制度とは異なり、任意後見人には取消権が認められていません。高齢者本人が詐欺などで騙されてしまった場合、任意後見人には契約を取り消す権限がありません。
◆法定後見制度の活用
法定後見制度とは
法定後見制度は、家庭裁判所により、認知症などにより判断能力が低下した方の財産管理を行う人を選任するものです。本人の判断能力の低下度合いに応じて3種類に分けられ、低下度合いの高い順から、成年後見人、保佐人、補佐人を付けることができます。
法定後見制度のメリット
- 認知症になってから利用できる: 認知症などで本人の判断能力が無くなった状態でも利用できる唯一の制度です。
- 取消権がある: 取消権とは契約などの法律行為の取消しができる権利で、本人が詐欺などの被害にあった場合も、後見人の事後対応がしやすくなります。ただし、日用品の購入などの日常生活に関するものについては対象外となる場合があります。
法定後見制度の注意点
- 費用の問題: 法定後見制度を申し立てるために費用と時間がかかります。また、親族以外の第三者を後見人にした場合、毎月の報酬が必要になります。
- 自由度が低い: 後見人や後見内容は家庭裁判所によって判断されます。本人や家族の希望と異なる財産管理となってしまうこともあります。
- 利用停止が出来ない: 一度制度の利用を開始すると、本人の判断能力が回復するか死亡するまで続きます。
◆家族信託の活用
家族信託とは
家族信託とは、認知症などに備えて自身の財産を家族に託し、管理や処分を任せることができる方法です。前述の二つの制度と異なり、本人の判断能力が低下する前から、管理を任せることができる特徴があります。
家族信託のメリット
- 自由度が高い: 信託の内容を自由に決めることができるので、本人の希望に沿った財産管理を受託者に行ってもらうことができます。
- 柔軟な財産管理が可能: 上述の制度では、本人のためになるものでしか財産管理は行えませんが、家族信託では家族のために資産を使うことができます。
- 遺言の機能を持つ: 本人の死亡後の財産の継承者を契約書上で指定できるので相続対策にも有効です。さらに二次相続以降の継承者も指定することができます。
家族信託の注意点
- 財産管理しか託せない: 家族に託せる内容は財産管理に関することのみとなります。そのため、入院や介護施設などへの入居手続きなどの法律行為を行ってもらうことはできません。
- 税務申告の手間が増す: 信託財産から不動産収益などが発生した場合、税務署へ信託の計算書を提出する必要があります。
◆まとめ:親の財産管理を適切に行うために
財産管理方法の比較と選択
親の財産管理には、いくつかの方法があります。自身の親の希望や財産の状況、認知症の進行度合いなどを加味して、どの制度を活用するかを決めましょう。
専門家への相談
上述の制度を活用する際は弁護士への相談をおすすめします。費用は掛かってしまいますが、安心して手続きを進めることができるでしょう。弁護士によってかかる費用は異なるため、複数の事務所から見積もりを取ってみるのも手です。
家族との相談
親の財産管理への対策は、本人が元気で判断能力のあるうちに進めた方がスムーズに行えます。認知症になってしまうと、活用できる制度の選択肢も限られてしまい、親や家族の希望が叶えられなくなるリスクがあります。家族全員で話し合う場を設け、将来管理方法で困らないように対策を行いましょう。
親の財産管理は、早めの対策と家族との協力が欠かせません。法的な知識が必要になる側面もあるため、必要に応じて専門家のアドバイスを受け、適切に進めましょう。
前の記事へ
« テーブルの捨て方とは?注意点と併せて解説!次の記事へ
遺品処理はいつやれば良い?罪悪感にはどう対処する? »